改訂新版 世界大百科事典 「サハーバ」の意味・わかりやすい解説
サハーバ
ṣaḥāba
預言者ムハンマドの教友のこと。狭義にはムハンマドと苦楽を共にしながらイスラムの礎石を築いた人々であるが,一般には,ムハンマドの生存中に,たとい幼児であっても彼に1度でも接した人すべてをいう。イスラムにおいて,サハーバが重要な意味をもつのは,サハーバが,預言者のスンナ(範例,慣行)を伝えるハディースの伝承の過程を記したイスナードの冒頭の人物になるためで,後世,その伝記(タバカート)が尊重された。ムハンマドの言行を直接見聞したサハーバが,次の世代にその言行を伝えて初めてハディースが成立する。ハディースの真偽の判定の根拠の一つは,そのハディースを伝えたサハーバが,ムハンマドのその言行を直接見聞できる立場にあったか否かにあるため,その伝記が尊重されたのである。また,サハーバは神の意志を直接に受けた預言者の指導下にあった人々で,その行動は預言者の,ひいては神の認めるものと後世に理解される。その意味でもサハーバの伝記は尊重された。
執筆者:後藤 晃
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報