改訂新版 世界大百科事典 「シャットネラ」の意味・わかりやすい解説
シャットネラ
Chattonella
日本沿岸では夏季高温時に,瀬戸内海など近畿以南の内湾域に大発生して赤潮をつくり,しばしば養殖魚介類に甚大な被害を与える藻類。カットネラともいう。ホルネリアHornelliaは異名。体は単細胞で,倒卵形ないし紡錘形を呈し,前端の小さい凹みから長さの少し異なる2本の鞭毛をだして泳ぐ。遊泳時に前方に伸びる1本の鞭毛は羽型構造であるのに対し,後方に伸びる他の1本はむち型構造である。細胞は外部原形質と内部原形質に区別され,前者には色素体が,後者には核などが存在する。色素体はクロロフィルaとcのほかに褐藻などがもつフコキサンチンを含むので,黄褐色~褐色を呈する。これらの特徴から,この藻は黄色植物門(または褐色植物門)のラフィド藻綱に所属する。生殖は二分裂による無性生殖のほかに,接合による有性生殖の記録があるが,後者についての詳細は不明である。全世界で3種の記録があり,そのうち,日本の沿岸には2種が知られる。一つは体長が70~130μmになる大型の種で,C.antiqua(Hada)Onoの学名をもち,他の一つは体長が30~55μmの小型種で,C.marina(Subrahmanyan)Hara et Chiharaという。
執筆者:千原 光雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報