改訂新版 世界大百科事典 「シルパシャーストラ」の意味・わかりやすい解説
シルパシャーストラ
śilpa-śāstra
インドの造形芸術(シルパ)に関する論書(シャーストラ)の総称。建築論(バーストゥシャーストラ)を主とし,諸尊の像容,絵画,彫刻などの諸規定を含む。インドでは芸術活動は工巧(くぎよう)神ビシュバカルマーViśvakarmāなどが造った天上界の諸作品を模倣することであると考えられ,芸術論書も神々もしくは聖仙(仙人)が記した神的な規定であるとされる。ヒンドゥー教の代表的建築論《マーナサーラ》は6~7世紀に南インドで編纂され,北インドの《サマラーンガナスートラダラー》は11世紀ごろの作。その他《アパラージタプリッチャー》《アビラシタールタチンターマニ》《シルパラトナ》などが有名。《ビシュヌダルモータラ・プラーナ》などのようにプラーナ,タントラ,アーガマ(阿含)などの諸文献にも芸術論を扱う個所がある。仏教のものでは造像規定を扱う《サーダナマーラー》(一部が独立経典として漢訳されている)や,漢訳《造像量度経》,文殊菩薩の掛幅画に関する《マンジュシュリームーラカルパ》(漢訳《文殊師利菩薩根本儀軌》)などがよく知られている。
執筆者:肥塚 隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報