改訂新版 世界大百科事典 「ジュウモンジシダ」の意味・わかりやすい解説
ジュウモンジシダ
Polystichum tripteron (Kunze) Pr.
日本各地の山中の林床に普通にみられるが,特に暖帯上部から温帯にかけての湿った場所に多いオシダ科の多年生シダ植物。北の地方では夏緑性となる。最下羽片が発達して羽状に分岐するため,葉面が十文字にみえるので,この和名がつけられた。根茎は斜上から直立し,数枚の葉を叢生(そうせい)する。葉は中型で,長さ40cm程度,最下羽片を除き単羽状から2回羽状中裂。鱗片は,葉柄基部のもの以外は小型・膜質で,軸に圧着してつく。胞子囊群は裂片の中肋と辺縁の中間につき,包膜とともに小型。胞子は6月の梅雨期に熟す。黄緑色の葉面と独特な葉形によって,たやすく識別できるシダである。千島,サハリンや朝鮮からアムール川流域,中国北部に分布している。近縁種に屋久島から中国南部にみられるタイワンジュウモンジシダや沖縄諸島のヤエヤマトラノオがあるが,同地域にジュウモンジシダはない。
執筆者:光田 重幸
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