スズ酸(読み)スズサンエン

化学辞典 第2版 「スズ酸」の解説

スズ酸(塩)
スズサンエン
stannic acid(stannate)

酸化スズの水和物Sn O2nH2Oは酸の性質をもつので,組成式をH4SnO4,H2SnO3,またはそれらの水和物のように表してスズ酸とよび,HをMに置き換えたものをスズ酸塩とよぶ.Snでも,同様にスズ(Ⅱ)酸(亜スズ酸(塩))が考えられるが,こちらは不安定で詳しくは知られていない.【】スズ(Ⅳ)酸:スズ(Ⅳ)塩水溶液にアルカリ水酸化物を加えて生じる白色沈殿は,生じてすぐのものは酸・アルカリに可溶で,α-スズ酸とよばれた.一方,この沈殿を放置するか,金属スズと濃硝酸との反応で得られる難溶性のものは,β-スズ酸(またはメタスズ酸)とよばれた.両者とも実際はSnO2nH2Oで,放置時間とともにnが減少することがわかっている.[CAS 21172-59-8]【】ヘキサヒドロキシスズ(Ⅳ)酸塩:M2[Sn(OH)6].スズ(Ⅳ)塩,またはスズ(Ⅳ)酸にアルカリを過剰に加えて溶かした液から濃縮析出させると,正八面体型六配位の [Sn(OH)6]2- イオンをもつアルカリ金属塩(M2SnO3・3H2Oと表されることもある)が得られる.SnO2と水酸化ナトリウムを溶融して浸出しても得られる.Na塩,K塩はスズめっき浴に使用される.[CAS 12027-70-2]【】M2SnO3型塩:ヘキサヒドロキシスズ(Ⅳ)酸のK塩を,加熱脱水したK2SnO3は,Snのまわりに5個のOをもつ正四角すい型五配位の [(SnO3)n]2n をもつ.【】M4SnO4塩:Ca2SnO4は,SnO2とCaOを強熱すると得られる.[(SnO4)n]4n は,Snのまわりに6個のOが正八面体型配置をとる.【複酸化物型:たとえば,Mg,Co,ZnなどのM2SnO4は,スピネル型構造で,複酸化物,四酸化スズ(Ⅳ)二マグネシウムである.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「スズ酸」の意味・わかりやすい解説

スズ(錫)酸 (すずさん)
stannic acid

酸化スズ(Ⅳ)SnO2の水和物。一般にはSnO2xH2Oの組成をもつ。xは一定値をとらず,ゲルとしての性質を示す。スズ酸塩水溶液に少量の希酸を加えると生ずる白色の沈殿はα-スズ酸と呼ばれる。構造などは明らかでない。α-スズ酸は水酸化アルカリや炭酸アルカリに溶ける。吸着性が大きく,有機色素,リン酸などをよく吸着する。溶液中に放置するか,加熱すると結晶性になり,酸化スズ(Ⅳ)に似た性質を示すようになる。これをβ-スズ酸と呼ぶ。比較的さらさらした白色粉末で,スズに濃硝酸を作用させても得られる。酸,アルカリ,炭酸アルカリに不溶。β-スズ酸をメタスズ酸と呼ぶこともあるが,これは正しくない。α-スズ酸とβ-スズ酸との相違はあまり明確ではなく,連続的に変化していると考えられている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スズ酸」の意味・わかりやすい解説

スズ酸
スズさん
stannic acid

αスズ酸 H2SnO3 と β スズ酸 H10Sn5O15 の2種があり,いずれも白色の非晶質粉末。両型とも水に不溶。α体は酸,カセイアルカリ溶液に可溶であるが,β体は酸には不溶である。加熱すると酸化スズに変る。酸化スズとしてはガラスや金属の研磨用,乳白ガラスエナメル,陶器,パテなどの製造,染色に利用される。

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世界大百科事典(旧版)内のスズ酸の言及

【水酸化スズ(水酸化錫)】より

…熱水中あるいは沈殿を加熱すると水を失って酸化スズ(II)SnOとなる。両性で,希酸に溶けてスズ(II)イオンとなるが,アルカリ性溶液にも溶けて亜スズ酸イオンSnO22-となる。強い還元性があり,アンチモン塩や鉛塩の水溶液からそれぞれの金属を沈殿させ,SnIIはSnIVにまで酸化される。…

※「スズ酸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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