一般式AB2X4となる金属元素の複酸化物、複硫化物にみられる典型的結晶構造形式の一つ。これらのうち、スピネルが最初に構造決定がなされたのでこのようによばれる。スピネルは組成MgAl2O4の鉱物で、空間群Fdmの立方(等軸)晶系の単位胞に、面心立方格子をつくる32個の酸素原子を含み、正四面体型4配位位置8か所にマグネシウム原子、正八面体型6配位位置16か所にアルミニウム原子が収まる。陽イオンA、Bには、正電荷の総和が8となる各種の組合せが可能であるが、その配列がスピネルと同じにならないものもある。スピネルと同じ配列のものをとくに正常スピネル型という。Bの半数が4配位、Bの半数とAが6配位の位置に収まるものを逆スピネル型といい、AとBが両方の位置に無秩序に分布するものを乱れスピネル型という。見かけ上AとBが同じ四酸化三コバルトCo3O4は正常スピネル型でCo(Co)2O4、四酸化三鉄Fe3O4は逆スピネル型でFe(FeFe)O4となる複酸化物である。
[岩本振武 2015年7月21日]
AB2X4の組成式で書き表すことができる無機化合物にみられる典型的な構造の一つ.尖晶石型構造ともいう.AとBは金属イオンで,Xは O2-,S2-,Cl- などの陰イオンである.立方晶系に属し,空間群Fdmの対称性をもつ.単位格子中に8化学単位が含まれる.陰イオンはわずかにひずんだ面心立方構造型の配列をしている.正スピネル構造(normal spinel)では,A原子は陰イオンのつくる正四面体間げきの1/8を占め,B原子は正八面体間げきの1/2を占める.図は陰イオンが正確な面心立方形配列をしていると仮定して描いたもので,原子が存在する位置での,一つの結晶軸に垂直な断面で,数値はその高さを示す.
小黒円がA,大黒円がB,白円がX原子である.A原子とB原子の半分が,正スピネル型構造におけるB原子の位置に統計的に分布し,残りのB原子が正四面体間げきを占める場合があり,この型の構造を逆スピネル型構造といい,B(AB)X4で表される.正スピネル型構造をもつ物質としては,スピネル(尖晶石)MgAl2O4のほか,ZnAl2O4,FeAl2O4,MoAl2O4,CdCr2S4,CdSr2Se4などがあり,磁鉄鉱Fe3O4,MgFe2O4,TiFe2O4などが逆スピネル型構造をもつ.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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