日本大百科全書(ニッポニカ) 「スノッドグラス」の意味・わかりやすい解説
スノッドグラス
すのっどぐらす
William Dewitt Snodgrass
(1926―2009)
アメリカの詩人。ペンシルベニア州出身。アイオワ州立大学卒業。大学で教鞭(きょうべん)をとるかたわら詩作をするという、同時期に多くみられた学者詩人の一人。1959年の第一詩集『心の針』でピュリッツァー賞を獲得。離婚して手放すこととなった娘への愛情を吐露して、「告白詩人」の名のもとに新傾向を示す詩風として注目を集めた。前世代のE・パウンドやT・S・エリオットらが非個性を標榜(ひょうぼう)したのに対して、個人的な感情への率直さと真摯(しんし)さを表に打ち出した。ただしそれはほろ苦い抒情(じょじょう)味に乗せてためらいがちに語る内面告白というやや古風なタイプのもので、確かに「告白」調の先鞭をつけはしたが、その後に続くビート派の詩人らのもっと攻撃的な感情暴露の「告白詩」に乗り越えられていった。
第二詩集『経験のあと』(1968)以後、ビジョンが広がり、私的な主題から社会的な主題へ、自己省察から社会批判へと向かう傾向を示す。アメリカ大学内部の欺瞞(ぎまん)性、第二次世界大戦復員軍人の心理的抑圧などの指摘が注目される。詩集の数はかならずしも多くないが、劇詩、軽快な詩形と内容のいわゆるライト・バース、子どものための詩を試みるなど多彩な活動を行った。
[沢崎順之助]