劇詩(読み)ゲキシ

デジタル大辞泉 「劇詩」の意味・読み・例文・類語

げき‐し【劇詩】

叙事詩叙情詩とともに詩の三大部門の一。戯曲形式で書かれた詩。詩劇同義に用いられることもある。

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精選版 日本国語大辞典 「劇詩」の意味・読み・例文・類語

げき‐し【劇詩】

  1. 〘 名詞 〙 抒情詩、叙事詩とともに詩の三大部門の一つ。戯曲の形式で書かれるが、上演されなくても、読むことによって十分に鑑賞することができる詩。ゲーテの「ファウスト」、バイロンの「マンフレッド」、北村透谷の「蓬莱曲」など。
    1. [初出の実例]「これといふ傑作も出ざれば劇詩の流行とも言ふべき程の事もあらず」(出典:劇詩の前途如何(1893)〈北村透谷〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「劇詩」の意味・わかりやすい解説

劇詩
げきし

dramatic poetryの訳語。詩の形式の一種で、直接上演を目的としなくても対話の劇形式で書かれた詩。詩劇の同義語として使われることもある。東西を問わず古来演劇は韻文劇であり、台詞(せりふ)は詩型をとっていた。近代に入ると写実的傾向が強まり、韻文劇の空疎さが指摘されて、散文劇が主流となってきたが、それでも19世紀のロマン派の詩人たちは韻文劇の伝統を捨てず、バイロンの『マンフレッド』(1817)、シェリーの『プロメテウス解縛(かいばく)』(1820)などの劇詩が書かれた。近代日本ではバイロンの影響の濃い北村透谷(とうこく)の『蓬莱曲(ほうらいきょく)』(1891)、島崎藤村の『悲曲琵琶(びわ)法師』(1893)などが劇詩とよばれる。

[藤木宏幸]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「劇詩」の意味・わかりやすい解説

劇詩
げきし
dramatic poetry

劇形式による詩の一種。古代から近世まで戯曲は韻文で書かれるのが普通であり,劇詩は戯曲一般を意味していた。散文による近代劇の確立以後は,上演を意図しない詩人の作品に劇詩の名称が用いられる一方で,舞台を意識した作品は詩劇 poetic dramaの名で呼ぶようになった。ドライデンはイギリスで最も重要な『劇詩論』を書いたが,その新版に寄せた T.S.エリオットのエッセーは『詩劇論』となっており,その違いは必ずしも明確ではない。

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世界大百科事典(旧版)内の劇詩の言及

【詩】より

… だが,それだからといって,韻文作品がすなわち詩であるということにはならない。韻文で書かれた伝承的英雄物語(叙事詩)や,韻文で書かれた運命劇(劇詩)は,かつてはそれぞれ詩の重要な一部門をなすと考えられていたが,今日ではむしろ,詩としてよりも物語として,演劇としての特性から評価される傾向にあり,詩はもっぱら抒情詩を中心として考えられるようになった。この傾向は,文芸思潮史の上では,西欧の18世紀後半から19世紀にかけてのロマン主義以降に顕著となったもので,時代的にははるかに遅れて発足した日本の新体詩においても,その最初期にこそ叙事詩や劇詩,さらには教訓詩などが試みられたものの,ロマン主義思潮の導入とともに同じ傾向を示すようになった。…

※「劇詩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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