日本大百科全書(ニッポニカ) 「スベリン」の意味・わかりやすい解説
スベリン
すべりん
suberin
植物のコルク組織の主成分で、木栓質ともいう。化学的には、炭素数22の長鎖のヒドロキシ脂肪酸やジカルボン酸を構成要素とする重合体と考えられている。スベリンは、化学的にも生物学的にも、植物の表皮のクチクラ組織にあるクチンと類似しているが、クチンよりもアルカリで加水分解しやすく、また化学処理によって解重合しやすい。スベリンは、植物の二次肥大成長に伴ってコルク形成層からつくられるコルク組織の細胞が細胞壁中に堆積(たいせき)した物質で、これによってコルク化した細胞壁は水や気体を通しにくくなる。樹種によって、コルク形成層の作用が長く続いて厚いコルク層をつくるもの(コルクガシ、アベマキ)、薄く強いコルク層をつくるもの(サクラ、シラカンバ)、局部的にコルク層が発達して翼状あるいはこぶ状の突起をつくるもの(ニシキギ、コブニレ)などがある。実用のコルクはコルクガシからとったもので、水をはじく性質を利用して木栓その他に用いる。
[吉田精一]