スホボコブイリン(その他表記)Aleksandr Vasil'evich Sukhovo-Kobylin

改訂新版 世界大百科事典 「スホボコブイリン」の意味・わかりやすい解説

スホボ・コブイリン
Aleksandr Vasil'evich Sukhovo-Kobylin
生没年:1817-1903

ロシア劇作家モスクワの古い家柄の貴族の家に生まれ,モスクワ大学物理数学科を卒業後,ハイデルベルク,ベルリン両大学で哲学を学んだ。後にフランス人の愛人殺害の嫌疑で逮捕・拘禁され,証拠不十分で事件審理は停止されたものの,精神的苦痛は計りがたく,疑惑はついに晴らされずに終わった。事件後,ヘーゲル哲学研究のかたわら,ゴーゴリの伝統を受け継ぐ傑作とされる戯曲三部作を書いた。狡猾な貴族が善良な地主父娘を欺く喜劇《クレチンスキーの婚礼》(1854),裁判制度裏面の腐敗と愚かだが誇り高い地主の悲劇を描く冷笑的風刺劇《事件》(1861),自分が死んだと偽って上役や債鬼の手を逃れようとする詐欺師の運命を描くグロテスクな笑劇《タレルキンの死》(1869)がそれである。このうち後の2作は検閲が障害となり上演されず,革命後,1917年にメイエルホリドの手で初めて完全な形で上演された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スホボコブイリン」の意味・わかりやすい解説

スホボ・コブイリン
すほぼこぶいりん
Александр Васильевич Сухово‐Кобылин/Aleksandr Vasil'evich Suhovo-Kobïlin
(1817―1903)

ロシアの劇作家。モスクワ大学卒業後ドイツに留学、哲学と法学を専攻した。1850年内妻のフランス婦人殺しの嫌疑を受けて一時投獄され、この体験をもとに官僚社会の腐敗、汚職欺瞞(ぎまん)を痛烈に風刺した『クレチンスキーの婚礼』(1854)、『事件』(1861)、『タレルキンの死』(1869)の喜劇三部作を書き、ロシア劇文学史上に特異な地位を占めている。

[野崎韶夫]

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世界大百科事典(旧版)内のスホボコブイリンの言及

【ロシア文学】より

…ひとことでいってロシア演劇の名を高からしめたのは劇的表現力に富んだロシア民族の生んだ名優と名演出家であって,必ずしも演劇の基礎であり,〈文学的部分〉である戯曲ではない。劇作のみに専念した作家としてあげられるのは,A.N.オストロフスキーとスホボ・コブイリンの二人にすぎない。大劇作家という観点から見れば,A.N.オストロフスキーとA.P.チェーホフの二人につきる。…

※「スホボコブイリン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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