改訂新版 世界大百科事典 「ゼーラント」の意味・わかりやすい解説
ゼーラント
Zeeland
オランダ南西部の州で,南縁はベルギーに接する。古くは地方名で,〈海の国〉の意。面積2745km2,人口38万0497(2007)。州都はミッデルブルフ。もともとは,スヘルデ・マース河口の八つの島々から成っていたが,17世紀以降の干拓や1955年に始まるデルタ計画に基づく締切堤防によって,ほぼ陸続きとなった。ゼーラントは中世末以来,対岸イギリスとの貿易で繁栄し,オランダ独立当時ホラントと並ぶ勢力であったが,その後ホラントに圧倒され後進的農業地帯として停滞し続けた。しかし,戦後の工業化の波がこの地方に及び,現在,農業人口は10%(サービス業50%,工業40%)。主要な農産物は穀物とテンサイ。工業は,フリシンゲン(大造船所〈スヘルデ〉)のほか,その東のスルーハーフェンSloehaven,それにベルギーのヘント工業地帯に続くテルネーゼン・ヘント運河沿いに集中している。なお,ベルギーに隣接するゼーラント領フランドルは,オランダ独立戦争の過程でオランダがスペイン領ネーデルラントから奪った地域で,1815年以来ゼーラント州に編入された。
執筆者:石坂 昭雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報