山川 世界史小辞典 改訂新版 「タイ国」の解説
タイ国(タイこく)
Prathet Thai
インドシナ半島中央部に位置する国。南はタイ湾,西はアンダマン海に面し,ラオス,カンボジア,ミャンマー,マレーシアとそれぞれ東,西,南側において国境を接する。国土は北部,東北部,中部,南部の,地形的にも歴史や文化においても特徴を有する各地方に区分される。北部は19世紀末までランナー王国の中心地域であった。東北部は先史時代から開け,モン人やクメール人も遺跡を残したが,18世紀以降ラオ人が多く住む。南部には19世紀末までマレー系の朝貢国が存在し,最南部では上座仏教徒が大多数を占めるタイにあって,マレー系ムスリム人口が卓越する。中部は,貫流するチャオプラヤー川がデルタの稲作穀倉地帯を古くから形成し,また至便な水上交通路となって,14世紀以降国際交易に依拠した港市国家アユタヤ朝の中心域をなした。18世紀末から現在に至る首都バンコクも中部に立地する。各地方は19世紀から20世紀初頭までに,バンコク朝シャムにより統合され,国王主導の近代化改革を通じて中央集権的地方行政制度に編入された。シャムは1932年の立憲革命により立憲君主制に移行し,39年に国名がシャムからタイに変更された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報