改訂新版 世界大百科事典 「タラウマラ」の意味・わかりやすい解説
タラウマラ
Tarahumara
メキシコ北部チワワ州の乾燥した山岳・丘陵地に住むウト・アステカ語系の原住民。言語的にはヤキに近く,文化的にはウイチョルに類似している。約7万5000の人口の多くはスペイン語も併用する。3亜文化集団から成り,タラウマラ全体としては政治的統一体を形成していない。トウモロコシ,豆,カボチャ,トマトの栽培のほか,ヤギ,牛の飼育に携わり,狩猟・採集もその補助的重要性を失っていない。夏季は冷涼な山岳地で板造の家に住み,ランチェリアという世帯集合を形成するが,冬季は家畜を伴い温暖な谷間の日乾煉瓦や石造の家あるいは洞窟で過ごすという,一種の移牧を行う。冬季には,相異なるランチェリアの家族が一時的な集住をする。タラウマラは人間の競走能力を高く評価し,自身を〈ララムリ(競走者)〉と呼ぶ。コースにそって木製の球を蹴りながら走る対抗試合を,個人間やランチェリア間でたびたび行うことで知られている。
執筆者:落合 一泰
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報