改訂新版 世界大百科事典 「ダゴール語」の意味・わかりやすい解説
ダゴール語 (ダゴールご)
Dagur
現代のモンゴル系言語(モンゴル諸語)の一つ。ダグール語,ダフール語,ダウール語ともいい,中国では達斡爾語と表記する。中国領内モンゴル(蒙古)自治区のフルンブイル(呼倫貝爾)盟の地域および黒竜江省のチチハル(斉斉哈爾)市付近の嫩江(のんこう)とその支流一帯の地域で話され,その使用人口は約8万にのぼる。その他,新疆ウイグル(維吾爾)自治区塔城県にも3000余人のダゴール語使用人口があると報ぜられている。この言語は,モンゴル系言語の中で,とくに中世的な古風な特徴を保持している点で,モンゴル系言語の研究上貴重な言語である。その一,二を例示すれば,音韻面では中世の語頭のhの残存(ダゴール語ではχとして残っている)が見られ,また形態面では中世の人称代名詞の残存(一人称複数のexclusive baa〈(相手を含めない)我々〉,また三人称単・複数のiin〈彼,彼女,それ〉,aan〈彼(彼女,それ)ら〉)があげられよう。方言的にはブトゥハ(布特哈)方言とチチハル方言に分かれ,その方言的差異は大きくない。
→ダフール族
執筆者:小沢 重男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報