日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダフール族」の意味・わかりやすい解説
ダフール族
だふーるぞく
Дагур/Dagur
中国の少数民族の一つで、中国語では達呼爾族、達斡爾族、打虎児族などと表記する。英語表記ではDafur, Daghur。ダウールDaur、ダグールDagur、ダホールDaghorともいう。人口は13万1992(2010)。中国の興安嶺(こうあんれい)と嫩江(どんこう)流域に主として住み、一部は新疆(しんきょう)ウイグル自治区の塔城(チョチェク)市にも住む。起源は諸説があり明らかでないが、16世紀に清(しん)朝に帰順し、ソロン、オロチョンらのツングース(エベンキ)諸族とともにプトハ八旗その他の駐防八旗に加わり、ロシアの南下に対する防備の役を果たし、また中国各地、遠く新疆にまで遠征して勇名をはせた。ダフール語(ダウール語)はツングース語系とも、ツングース語とモンゴル語との混合、あるいは古い形を残したモンゴル語の一つともいわれる。ソロン人らツングース系諸集団との混住の結果、言語だけでなく多くの文化要素に関してツングース系諸集団からの影響を受け、またソロン人との混血も行われている。そのため、ソロン人と混同されることが多い。16世紀にロシア人が初めてダフールの人々に接したころ、彼らは、農業も一部は行っていたが、狩猟に巧みで、動物を食べるだけでなく、毛皮を交易品にしていた。現在では農業が主で、牧畜も行っている。ダフールは約18の父系氏族に分かれ、集落はほぼ同一氏族によって構成される。婚姻は氏族外婚制、夫方居住制をとり、ハイパガミー(昇嫁婚)の傾向もみられる。財産は兄弟均等に相続されるが、父の家屋は普通末子が相続する。宗教はチベット仏教(ラマ教)も入っているが、伝統的にはシャーマニズムである。
[板橋作美]