化学辞典 第2版 「チアミン塩酸塩」の解説
チアミン塩酸塩
チアミンエンサンエン
thiamine hydrochloride
C12H18Cl2N4OS(337.27).ビタミン B1 ともいう.抗脚気因子.米ぬか,胚芽,酵母などに含まれている.多くの合成法が知られているが,別々に合成したピリミジン部とチアゾール部とを縮合させると得られる.白色の結晶.分解点248 ℃.λmax 243 nm(log ε 10.6,pH 2.3),268 nm(log ε 9.0,pH 6.0).水に易溶,エタノールに微溶,クロロホルムに不溶.乾燥状態では空気中で安定であるが,吸湿するにつれ徐々に分解,着色する.水溶液は pH 2~4で安定であるが,アルカリ性で分解する.アルカリ酸化によりチアミンジスルフィドを生成する.チアミンはチアミン二リン酸の形で糖質代謝系酵素の補酵素として広く自然界に分布している.補酵素作用のほか,抗神経炎作用が知られている.この欠乏症の発現は,動物の種類によってかなり相違があり,ウシ,ヒツジなどの反芻動物は,細菌による腸内合成が盛んなために欠乏症は起こりにくく,ヒトでは脚気様症状,鳥類,ネズミでは神経炎を起こす.[CAS 67-03-8][CAS 59-43-8:塩基]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報