日本大百科全書(ニッポニカ) 「チケット不正転売禁止法」の意味・わかりやすい解説
チケット不正転売禁止法
ちけっとふせいてんばいきんしほう
音楽、芸能、スポーツなどのチケットの不正な転売を禁止する法律。オリンピック・パラリンピック東京大会のチケット販売を見据え、2018年(平成30)12月に議員立法で成立し、2019年(令和1)6月に施行した。正称は「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(平成30年法律第103号)で、「入場券不正転売禁止法」ともよばれる。駅やイベント会場周辺での不正転売(ダフ屋行為)は自治体条例で規制されてきたが、インターネット上の不正転売を禁ずる法律がなく、同法はネット上を含め、行き過ぎた転売行為に歯止めをかけるねらいがある。規制対象は、日本国内の興行で不特定あるいは多数に販売し、日時・場所や座席などが指定され、興行主が入場者の氏名・連絡先を確認し、不正転売禁止を明記したチケット(特定興行入場券)。スマートフォンなどの画面に表示され、入場時に専用端末にかざして使われるQRコードも含まれる。同法は不正転売を、興行主に無断で業(商売)として販売価格を超える価格で譲渡することと定義し(第2条の4)、不正転売とそのための仕入れ行為(譲り受け)を規制対象とした。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科される。販売価格と同額またはそれ以下の価格で転売する場合や、病気や仕事などで都合が悪くなってやむを得ず転売する場合は規制対象外となる。
興行主には、入場時の本人確認の徹底や、他の人に譲り渡す仕組みづくりを努力義務とした。同法制定を受け、オリンピック・パラリンピック東京大会の大会組織委員会は不正転売を防ぐため、公式チケット販売サイトでは個人情報を入力してID登録する方式を採用。非公式に入手したチケットは使えないようにする。また、やむを得ず観戦できなくなった人を対象に、公式再販売サイトを設け、定価で引き取る計画である。
[矢野 武 2019年8月20日]