改訂新版 世界大百科事典 「チン氏」の意味・わかりやすい解説
チン氏 (チンし)
ベトナムのレ(黎)朝後期(1529-1788)に,レ帝を抑えて実権を握り,フエに拠るクアンナム(広南)朝グエン(阮)氏に対抗した一族。鄭 Trinn氏とも書く。祖チン・キエム(鄭検)は16世紀,マク(莫)氏によってレ朝が中絶したおり,グエン・キム(阮淦)の幕下で再興に努力し,1545年キムの死とともに太師となって実権を握った。92年その子チン・トゥン(鄭松)がハノイを奪回しレ帝を迎えたが,99年以降自ら王府を開いて国政を掌握した。1627年から74年まではクアンナム朝と争い,また77年まではカオバンに拠るマク一族と戦った。18世紀以降,チン・クオン(鄭棡),チン・ザン(鄭杠)の代に均田例,租庸調制など,唐制に模した改革を行ったが,かえって流民層による反乱を引き起こし,ついに1786年タイソン党のグエン・フエ(阮恵)により滅ぼされた。
執筆者:桜井 由躬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報