改訂新版 世界大百科事典 「テトラルキア」の意味・わかりやすい解説
テトラルキア
tetrarchia[ギリシア]
古代ヘレニズム・ローマ時代の四分治制。〈4分の1の権力〉が本来の意味。テッサリアの4政治・軍事区分を指して用いられたのが起源らしい。のちこれは実効性を失ったが,前4世紀にテッサリアを支配したマケドニアのフィリッポス2世がテトラルキアを復活させ,4人の部下を長として派遣してテッサリアの反抗を抑えた。やがてのちのヘレニズム諸王国でもこれを取り入れるものがあり,四つに限定されず,下級政治区分一般を指して用いられることもあった。ローマ時代にはユダヤのヘロデ大王の息子たち3人も分封領主(テトラルケス)と呼ばれた。しかし最も有名なテトラルキアは,3世紀末にディオクレティアヌスが広大な領域を分割統治するために定めたもので,東西に2人ずつの養子縁組した正帝(アウグストゥス)と副帝(カエサル)をおき,ユピテル,ヘラクレスなどの神々の保護を強調した。この制度でペルシア,ガリア方面が安定し,帝国の再建がなった。これはあくまで分割統治であって分裂ではなく,軍の管轄方式,法・税制などの違いはなかった。
執筆者:松本 宣郎
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