日本大百科全書(ニッポニカ) 「テレビ電話」の意味・わかりやすい解説
テレビ電話
てれびでんわ
video phone
電話機、ビデオカメラ、画像送受信機、ディスプレーが一体となった装置で、通常の電話における音声だけでなく、ディスプレーによりテレビと同じように相手の画像を映し出し、顔を見ながら通話するシステムをいう。基本原理は、画像系についてはテレビジョンと同じ原理であり、カメラにより自分を映し、画像信号に分解して対地に伝送する。対地から受信した画像信号は、ディスプレー上に相手を映し出す。音声系については、通常の電話と同じ原理である。伝送コストを下げるために、デジタル技術によって画像信号と音声信号の帯域を大幅に圧縮する方式が使われる。その結果、通常の電話1回線相当(64キロビット/秒)の帯域があればほぼ実用的な通信品質が得られる。インターネットや携帯電話によるテレビ電話も、64キロビット/秒で伝送されているものが多い。参加人数の多いテレビ会議などでは電話6回線相当(384キロビット/秒)の帯域を必要としている。また、大型ディスプレーを用いた臨場感のあるテレビ電話では、高精細ビデオカメラを用いており、この場合は1~2メガビット/秒の帯域を必要とする。
テレビ電話の着想は19世紀末に発表され、1927年にアメリカのベル・システムがニューヨーク―ワシントン間で電話回線を用いてテレビ伝送に成功した。本格的な研究は1950年ころから始まったが、テレビ電話がもたらす効用に比べてコストが高く、長い間普及には至らなかった。しかし、デジタル技術の進歩による帯域圧縮とデジタル・ネットワークの発展に伴って通信コストが電話と同等になり、また端末コストも下がったため、1990年代に入り企業などのテレビ会議用として急速に普及するようになった。さらに、2000年代に入り、パソコンとインターネットを利用するテレビ電話や携帯電話端末によるテレビ電話が出現し、個人利用が拡大している。
[坪井 了・三木哲也]