日本大百科全書(ニッポニカ) 「テングノムギメシ」の意味・わかりやすい解説
テングノムギメシ
てんぐのむぎめし / 天狗の麦飯
高山の地面に生ずる特異植物で、飯砂(めしずな)などともよぶ。日本特産で、富士火山帯およびその付近の標高1000メートル以上の火山性山地だけに産する。灰褐色でゼラチン質に富む。1センチメートル以下の小塊状体であるが、草地の地表下5~20センチメートルの所では厚い層となる。冬季に繁殖する。山の修験(しゅげん)者などがこれを食べて飢えをしのぐといわれ、その名は江戸時代から知られていた。テングノムギメシがなんであるかは長い間不明であったが、藍藻(らんそう)植物のグロエオカプサGloeocapsaとグロエオテカGloeothecaが主体であるというのが最近の一致した見解である。
[新崎盛敏]