改訂新版 世界大百科事典 「デュプレックス」の意味・わかりやすい解説
デュプレックス
Joseph François Dupleix
生没年:1697-1763
フランス東インド会社のインドでの貿易拠点であったポンディシェリーの総督として,イギリスとの植民地抗争を推進した。彼がシャンデルナゴルの長官からポンディシェリーの総督の地位に就いた1741年当時の南インドは,さまざまな政治勢力が対立抗争し合う混乱した政治状況下にあった。フランスと,拠点をマドラスに置くイギリスは,いちおう中立的位置を保っていたが,44年にヨーロッパでの英仏交戦のニュースが伝わるにおよび,両者の軍事的衝突がインドを舞台に始まることとなった(カルナータカ戦争)。デュプレックスは,各地の政治勢力を味方につけようと積極的な政治・軍事行動をとり,一時はカルナータカからデカンにまでその支配を及ぼすことに成功した。しかし,軍事支出の増大と貿易活動の停滞による財政危機を憂慮した本国政府は,54年に彼を解任し,本国へ送還された彼は63年に失意のまま没した。
執筆者:水島 司
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報