日本大百科全書(ニッポニカ) 「データサイエンティスト」の意味・わかりやすい解説
データサイエンティスト
でーたさいえんてぃすと
data scientist
さまざまな課題の解決や展望を予測するため、膨大に蓄積されているビッグデータの内容やその分布を調べ、特定の傾向や性質に基づいた解析によって適切な解決方法を提示・評価する職業。ICT(情報通信技術)の環境整備を背景に、企業などが収集、蓄積するデータの種類や量は爆発的に増加し続けており、ここから必要なデータを取り出し、効果的に実際のビジネスや社会活動に利用するデータサイエンティストの存在が注目されている。21世紀は「データが産業のコメになる」といわれており、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)によるユーザー情報の収集や、POS(ポス)データによる商品管理情報などの膨大なデータをどのように企業マネジメントやビジネス戦略に役だてるかが課題になっている。
従来のITエンジニアが担っていた情報処理やプログラミングの技術に加え、社会や企業の動向を数理モデルに反映するには幅広い知識が必要になる。2013年(平成25)7月に、データサイエンティストに対する支援と啓蒙活動などを目的とした一般社団法人データサイエンティスト協会が発足した。2017年には、滋賀大学にデータサイエンス学部が開設されるなど、専門家育成の動きが広がっている。
アメリカにおけるデータサイエンティストという仕事への認識もまだ新しいもので、2012年に行われた大統領選挙の際、統計学の専門家シルバーNate Silver(1978― )が、全米50州の選挙結果を予測し、すべて的中させたことで認知度が高まった。シルバーは特別なデータを利用せず、過去と現在の世論調査や経済指標など、一般に入手可能な幅広いデータを活用し、だれが勝利するかを判定する数理的分析手法によって完璧な分析結果を得た。シルバーは2008年の大統領選挙の際にも、50州中で49州の投票結果を的中させたことで話題となり、2009年にはアメリカの週刊誌『タイム』が選ぶ「世界でもっとも影響力がある100人」に選ばれた。
[編集部]