日本大百科全書(ニッポニカ) 「トガクシショウマ」の意味・わかりやすい解説
トガクシショウマ
とがくししょうま / 戸隠升麻
[学] Ranzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô
メギ科(APG分類:メギ科)の多年草。トガクシソウともいう。高さ30~50センチメートル。葉は1回3出複葉で2枚、茎に詰まってくっつくので対生にみえるが互生である。5~6月、集散花序をつくり、淡紫色花を3~7個開く。萼片(がくへん)は9枚、内側の6枚は花弁状で大きい。花弁は6枚、小形で2個の蜜腺(みつせん)がある。雄しべは6本、葯(やく)は弁開し、花糸は刺激を受けると雌しべ側へ傾く。雌しべは1本、子房は1室で、多数の胚珠(はいしゅ)がある。果実は白色の液果。日本固有の植物で、中部地方以北の本州の日本海側の多雪地帯にまれに生育する。この属は、メギ科のなかで、木本の属と草本の属の両方の形質を持ち合わせている特異な植物であることで知られている。また日本人の研究者(伊藤篤太郎)が学名をつけた最初の植物であるという点でもよく知られている。名は、長野県の戸隠山(とがくしやま)で初めて採集されたことによる。美しい植物なので、山草として栽培されることがある。
[寺林 進 2019年9月17日]