トガリバガ

改訂新版 世界大百科事典 「トガリバガ」の意味・わかりやすい解説

トガリバガ (尖翅蛾)

鱗翅目トガリバガ科Thyatiridaeの昆虫総称カギバガ科やシャクガ科に近縁で,翅の形はヤガ科のガに似て細長い。オーストラリア地区や海洋島を除く世界中に分布するが,東南アジアで種数がもっとも多く,日本には38種が分布している。翅の開張3~4cmの中型種が多いが,なかには4cmを超える種もある。前翅には斑紋をもつが,後翅は無紋に近く,単純な色彩をしている。胸や腹部背面に鱗毛が束になって密生し,前翅を屋根型にたたんで毛の束が隆起している姿は,きわめて特異である。すべて夜行性で,よく灯火に飛来する。幼虫の体は大部分円筒形で滑らか,刺毛が目だたないので芋虫型である。近縁のカギバガと違って尾脚をもち,尾状突起がない。食葉性で,おもに広葉樹灌木に寄生する。害虫として注目される種は一つもない。年1回発生する。成虫早春に出現するものや,秋にだけ現れるものがあり,また少数ながら亜高山帯に適応している種もいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トガリバガ」の意味・わかりやすい解説

トガリバガ
とがりばが / 尖翅蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目トガリバガ科Thyatiridaeの総称。この科の種類は、はねの開張25~60ミリ。中形のガで、はねの形や斑紋(はんもん)はヤガ科に似ているが、形態的にはカギバガ科に近縁である。世界的に分布しているが、ユーラシア大陸から東南アジアに種の数が多い。日本には38種が分布している。成虫はすべて夜行性で、よく灯火に飛来する。平地から低山地に多いが、ごく一部の種は、亜高山帯や緯度の高い寒冷地に適応している。静止する際は、はねを屋根状に畳み、斑紋のほとんどない後翅を隠し、じみな色彩斑紋の前翅と頭胸部によって、背景によく溶け込む。多くの種では、胸部背面の毛の束が、まるで木の枝の切断面あるいは側芽のような形を示している。幼虫は刺毛の目だたないイモムシ型が多い。カギバガでは尾脚を欠くが、この科では、たとえほかの腹脚より小さくても、つねに存在する。食樹性で、葉を緩やかに巻いてすむものが多い。とくに重要な害虫はいない。

[井上 寛]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トガリバガ」の意味・わかりやすい解説

トガリバガ
Thyatiridae

鱗翅目トガリバガ科の昆虫の総称。一見ヤガに似ているガで,世界から 120種ほどしか知られていない小群で,日本には約 30種が分布する。触角は太く扁平で,まれに櫛歯状のものがある。後肢脛節に2対のとげをもつ。トガリバの名は,ナガトガリバ Lithocharis maximaの前翅頂がとがることから (他の種では特にとがらない) 。成虫は早春に出る型と春,夏に出る型とがある。早春に出るものは一般に翅が細長く,体は軟らかい鱗毛でおおわれる。ナガトガリバは6~7月に現れ,前翅の開張幅 57~60mmと本科の日本最大種で,本州四国九州に分布する。

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