六訂版 家庭医学大全科 の解説
トキソプラズマ性網脈絡膜炎
トキソプラズマせいもうみゃくらくまくえん
Toxoplasmic chorioretinitis
(眼の病気)
どんな病気か
トキソプラズマと呼ばれる単細胞の
先天性感染と後天性感染があります。一般的には先天性の両眼性のタイプや、それらの
原因は何か
このトキソプラズマは、日本人では約30%の人が体内にもっていると報告されています。ただし、この場合は症状を示しません(
問題となるのは先天性感染の場合です。いまだ感染していない妊婦の人が、寄生虫をもつネコやイヌ(それらの
後天性の場合は、その原因はいまだはっきりとはわかっていません。免疫力が落ちた場合に発症することが多いといわれています。
症状の現れ方
症状は、先天性と後天性で異なります。先天感染の場合は、
エイズの人などに起こる後天感染では、激しい
検査と診断
この病気の診断で重要なのは、眼底検査と血清学的な検査です。典型的な眼底像は、先天感染では黄斑部に存在する境界明瞭な
近年増加している後天感染では、
これら眼底病変に加え、先天感染、後天感染ともにトキソプラズマ血清抗体価(IgG、IgM)の上昇が診断にとって重要です。
治療の方法
日本ではこの病気に対し、アセチルスピラマイシンの内服治療が行われます。約4~6週間内服し、効果がある場合は継続します。発症に免疫反応が関与していることが示唆されているので、ステロイド薬の内服を併用する場合もあります。
先天性またはその再発の場合、診断・治療方針は、ほぼ確立されています。問題は後天感染の場合です。先天性のような典型的な眼底像を伴わないため、診断に苦慮することが多いのが現状です。
また、前述したように発症原因もいまだ明らかではありません。しかし、その背後に何らかの免疫不全状態があると考えられ、それによる不顕性感染の顕性化(今まで体内にいて病気を起こさなかったものが突然に病気を引き起こすようになること)が指摘されています。このような場合、背後に何らかの全身性の病気が隠れていないかを調べることが重要です。
尾崎 志郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報