日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゲトサカ」の意味・わかりやすい解説
トゲトサカ
とげとさか / 棘鶏冠
腔腸(こうちょう)動物門花虫綱八放サンゴ亜綱ウミトサカ目チヂミトサカ科Dendronephthya属の海産動物の総称。ウミトサカ類のなかではもっとも多くの種を含み、主として西太平洋からインド洋にかけての暖海に分布する。チヂミトサカ科は個虫が枝の先端部などに固まって位置し、個虫のないところと判然と区別でき、群体柄部の共肉中には全体にわたって骨片をもつことにより、ほかの科から区別される。トゲトサカ属は枝先に個虫の密集がみられることと、個虫の背側支持骨片束が強大なことによってチヂミトサカ科の他属から区別される。
日本の暖海から30種以上が知られていて、ポリプ頭の骨片が赤く、支持骨片束が白いオオトゲトサカDendronephthya giganteaがもっとも普通にみられるが、支持骨片束も赤いアカトゲトサカD. nipponica、すべての骨片が橙(だいだい)色のキイロトゲトサカD. aurea、群体の枝が分叉(ぶんさ)状に出るホソエダトサカD. cervicornis、個虫が散形花序配列をするビロードトゲトサカD. habereriなどがある。近縁種に、支持骨片束の発達のよくないチヂミトサカ属Nephthea、枝先の個虫が大きなグループをつくらないキバナトサカ属Stereonephthyaなどがある。
[内田紘臣]