改訂新版 世界大百科事典 「トルエンスルホン酸」の意味・わかりやすい解説
トルエンスルホン酸 (トルエンスルホンさん)
toluenesulfonic acid
トルエンのベンゼン環にスルホン酸基(スルホ基)-SO2-OHが置換した化合物。o-,m-,p-の3種の位置異性体(上式)が存在する。75℃でトルエンに発煙硫酸を反応させると容易にスルホン化が起こり,o-体19%,m-体6%,p-体75%の異性体混合物が得られる。p-トルエンスルホン酸は通常1分子または4分子の結晶水をもち,1水和物は105~106℃の融点を示す。水によく溶け,アルコール,エーテルにも可溶。o-トルエンスルホン酸は潮解性のある結晶で,100℃以上に加熱すると一部p-体に変化する。m-トルエンスルホン酸の合成は,トルエンのスルホン化よりも,p-トルイジン-m-スルホン酸をジアゾ化したのち熱アルコール中で亜鉛で分解するほうが効率がよい。p-体の誘導体の中で重要なものにp-トルエンスルホニルクロルアミドナトリウムがある。これは強い酸化力をもち,クロラミンTという名称で殺菌剤や写真現像用に利用される。
執筆者:小林 啓二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報