日本大百科全書(ニッポニカ) 「脱水反応」の意味・わかりやすい解説
脱水反応
だっすいはんのう
dehydration reaction
脱離反応の一種であり、水が脱離する反応をいう。1分子の有機化合物の分子内で1分子(または2分子以上)の水がとれる反応、および有機化合物2分子から水が脱離して縮合する反応の総称。
たとえばエタノール(エチルアルコール)の分子内脱水反応では、水が1分子的に脱離してエチレンが生成し( の(1))、2分子間の脱水反応ではジエチルエーテルが生成する( の(2))。硫酸を触媒として加えてエタノールを加熱すると、140℃ではジエチルエーテルができるが、もっと温度を上げて165℃以上にするとエチレンが生成する。
このほかに、カルボン酸アミドからニトリルを生成する反応、カルボン酸とアルコールからエステルを生成する反応(エステル化)、カルボン酸から酸無水物を生成する反応、アルデヒドやケトンとヒドロキシルアミンからオキシムを生成する反応など、多くの反応が知られている( )。2分子間の脱水で新しい一つの分子を生ずる反応は脱水縮合反応とよばれる。
脱水反応は単に加熱するだけで進行する場合もあるが、脱水を促進するために水に対する親和性の大きい硫酸、五酸化リン、無水酢酸などの試薬を加えて行う場合が多い。これらの試薬を脱水剤という。
[廣田 穰]