西アジア(イランおよびその周辺)の酒杯形の一面太鼓。ドンバクdonbakともいう。ペルシア語にはかつてトンブークという名も存在したが,トルコ語ではデュンベレクないしドゥンバラク(17世紀中葉エウリヤ・チェレビーによる記録)と発音される。トルコのダルブッカに似るが,イランのトンバクはより大型で全長約46~50cmの一木(クルミ材)をくりぬいて胴とし,杯の開口部(直径30~32cm)にヤギまたは牝羊の革を張って作る。胴の底部(杯の脚)には革を張らず開口のまま。座った奏者はこの太鼓を左膝にのせ左小脇に抱えた姿勢で,前面の革を両手の掌と指先とを巧みに使って打ち,さまざまな音色を出す。トンバクの胴は素焼の粘土または金属板で作られることもあるが,古典音楽にはもっぱら木製のものを用いる。なお音楽家の間ではこの太鼓をザルブzarb(拍節)と呼ぶことが多い。
執筆者:柘植 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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