日本大百科全書(ニッポニカ) 「と畜場」の意味・わかりやすい解説
と畜場
とちくじょう
食用に供する目的で、ウシ、ウマ、ブタ、メンヨウ、ヤギをと畜、解体する施設。設置、運営は「と畜場法」(旧「屠場(とじょう)法」の全面改正により1953年制定)の規制を受ける。開設には都道府県知事の許可を要し、対象家畜の、と畜場以外でのと畜、解体は禁止されている。このような法令規制の趣旨は、家畜疫病の伝染防止、食肉の衛生保持にあり、生体、と体、枝肉、内臓検査が行われ、枝肉、内臓に検印が付される。
わが国最初の、と畜場開設は幕末ごろで、外国人居留地への肉の供給が必要になってからと考えられている。従前は地場消費用の施設であったが、1960年(昭和35)ごろからの消費増大と生産・流通構造の変化に伴い、食肉卸売市場の付属施設、食肉センターのような生産者団体の出荷施設として再編整備されてきた。部分肉加工、冷蔵保管機能をもつ大型施設も増え、作業工程の合理化も進んでいる。また、1996年(平成8)夏の、病原性大腸菌O157による大規模な食中毒の発生を契機に、と畜場施行令が一部改正され、HACCP(Hazard Analysis Critical Control Pointの略称。ハサップ。危害分析に基づく重要管理点)の考え方に基づき、衛生対策が強化されている。97年の、と畜場数は336か所、うち4割強が公営である。最大規模は東京都中央卸売市場食肉市場で、1日の処理能力は大動物365頭、小動物1710頭となっている。
[新山陽子]