日本大百科全書(ニッポニカ) 「食肉センター」の意味・わかりやすい解説
食肉センター
しょくにくせんたー
主として産地において、食肉用家畜のと畜・解体を行う施設。高度経済成長期の食肉生産と消費の急増に対応して、古い食肉流通構造の改善が必要となり、消費地への食肉卸売市場の設置とともに、産地への食肉センターの設置が国の政策として進められた。食肉センターの設置は、1960年(昭和35)から農林省(現農林水産省)の補助事業として開始された。
食肉センターが設置される前は、家畜の生体流通に関する技術情報や、と畜場利用の独占に基づいて形成された、家畜商―食肉問屋による閉鎖的な流通構造があり、農家は家畜商への庭先販売を余儀なくされていた。産地への食肉センターの設置によって、食肉センターでのと畜と農業協同組合(農協)を通した枝肉の共同出荷を促進し、閉鎖的な流通構造の独占を打破することが目ざされたのである。実際に、豚肉、牛肉の生体流通から枝肉・部分肉流通への転換に果たした役割は大きい。
その機能は設置時期や経緯によって異なる。多くは委託の、と畜業務を行い、産業分類ではサービス産業に区分される。と畜料を支払うのは農家であり、農協を介して食肉センターへ、と畜が委託され、また、と畜後の枝肉が食肉センターにおいて農協を介して購買者との間で相対取引されることが多い。大型施設では部分肉処理や冷蔵保管施設を備え、生産者団体の産地における肉畜処理・出荷基地として機能している。また、1990年代に入り、HACCP(Hazard Analysis Critical Control Pointの略称。ハサップ。危害分析に基づく重要管理点)システムを導入して衛生管理の強化を図るところが出てきている。
全国出荷頭数に占める食肉センターのと畜実績は、牛41.3%、豚48.5%である(1996)。設置数は133か所、設置・運営主体は地方自治体やその広域事務組合、生産者団体(系統農協)、および生産者団体・地方自治体・食肉関係者団体などの共同出資の株式会社である。
[新山陽子]