日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドイツ・イデオロギー」の意味・わかりやすい解説
ドイツ・イデオロギー
どいついでおろぎー
Die deutsche Ideologie ドイツ語
1845年秋から翌年にかけてマルクスとエンゲルスが共同で執筆した著作。当時のドイツの代表的思想家を批判し、あわせて著者自らの「哲学的良心を清算する」ことをねらったものである。第一巻ではヘーゲル左派の論客であるフォイエルバハ、B・バウアー、シュティルナーが、第二巻では真正社会主義者が取り上げられ、彼らが見かけ上の急進性にもかかわらず、現実を転倒して把握する観念論的見方を脱却しえていないイデオローグであると批判されている。とりわけ重要なのは、思想をその現実的土台にまで引き戻してとらえ直すイデオロギー論を確立した第一巻第一編「フォイエルバハ」である。ここで初めて史的唯物論の根本思想と方法が、またそれに基づいて、共産主義社会へと至るべき人類の発展史が体系的に叙述され、労働分業が疎外の原因として告発された。本編は未完であり、また編集上未決着の問題を抱えているが、マルクス主義を理解するうえで不可欠である。
[藤澤賢一郎]
『『ドイツ・イデオロギー』(アドラッキー編、古在由重訳・岩波文庫/廣松渉編・訳・1974・河出書房新社)』