ある社会において特定の階級や党派の立場を思想的に代弁する人間をさす。イデオロギーということばを初めて学問的に用いたのは、18世紀末期のフランスの唯物論哲学者デスチュット・ド・トラシであった。彼を含む当時の急進的唯物論者たちは、政治的にはナポレオンの反対者であった。ナポレオンは、彼らが民衆の社会意識の合理的啓蒙(けいもう)を企図したことを怒り、「空虚な観念をもてあそぶもの」という軽蔑(けいべつ)の意味を込めて「イデオローグ」ということばをトラシらに投げつけた。その後、マルクスとエンゲルスが『ドイツ・イデオロギー』のなかで青年ヘーゲル派の俗流哲学者たちをイデオローグとよんで批判したときには、資本主義社会の矛盾の顕在化を背景として、同じことばがまったく逆の立場から投げ返された。こうして、今日では一般に、ある階級や党派の立場を思想的に代弁する人々を意味するようになっている。
[田中義久]
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[学説史]
もともとこの概念は18世紀末から19世紀初頭にかけてベーコン,ロック,なかでもとくにコンディヤックの感覚論の影響の下に,観念や知識の起源と発達を実証的に研究しようとするカバニス,デステュット・ド・トラシーなどの〈観念学者たち(イデオロジスト)〉がその学問(観念学idéologie)に付与した名称であった。彼らはこの〈イデオロジー〉をもって正しい人知の開発と社会の変革のための指導要綱としたのであるが,のち政敵となったナポレオンから〈イデオローグ〉,つまり大言壮語する空論家,と蔑称されるにいたって,イデオロギーは多かれ少なかれ現実と遊離し,政治的実践にとって無用の空疎な観念体系,という意味合いを一方でもつようになった。ヘーゲル主義哲学を〈ドイツ・イデオロギー〉と呼び,その幻想性,非現実性を批判したマルクス,エンゲルスのイデオロギー論にもこうした観点は継承されている。…
…イデオロジストは,その研究者のことで,彼のほか,カバニス,ボルネ,ガラ,ドヌーらがこの学派に属する。なお,イデオローグidéologuesは,ナポレオンが彼らを軽蔑して呼んだ名で,〈空論家〉というほどの意味が込められていた。【中川 久定】。…
※「イデオローグ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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