日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュティルナー」の意味・わかりやすい解説
シュティルナー
しゅてぃるなー
Max Stirner
(1806―1856)
ヘーゲル左派に属するドイツの哲学的文筆家。10月25日バイエルンのバイロイトに生まれる。本名ヨハン・カスパール・シュミットJohann Kaspar Schmidt。「おでこのマックス」(マックス・シュティルナー)は、あだ名でペンネーム。不遇のなか、ベルリンにおいてF・エンゲルスや急進派のブルーノ・バウアーやその弟のエドガーEdgar Bauer(1820―1886)らと交わり、1845年に主要著作『唯一者とその所有』を出版する。ここにおいて、国家・教会・神・道徳およびそれらに関する諸秩序、それに人間性という概念等は実体のない亡霊にすぎないと論断した。そして自らは、頭の中だけに存在するこれら精神の産物に煩わされることなく、自らにとって唯一無二である自分自身をみいだし、これを確固として所有し、この確固たる自分自身をのみ生きると宣言する。徹底した個人主義を説いたこの著作によって一躍名声を博す。だが、それもつかのま、1848年のドイツ三月革命とともに忘れさられて、不遇のうちに、1856年6月26日ベルリンにて世を去る。19世紀終盤以後、彼はニーチェの超人思想や実存主義等との連関においてふたたび注目されるに至る。
[高山 守 2015年2月17日]