日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドルジュレス」の意味・わかりやすい解説
ドルジュレス
どるじゅれす
Roland Dorgelès
(1886―1973)
フランスの小説家。本名はロラン・レカブレRoland Lécavelé。アミアンの生まれ。美術学校に学び、ジャーナリストとなりモンマルトルでカルコ、マッコルランらと交友する。第一次世界大戦に従軍、その体験に基づいて書いた『木の十字架』(1919)で一躍文名を得る。兵士たちの生活の苦しい現実が気どらず高ぶらない筆致で、ユーモアと哀感を交えて描き出されている。この成功がその後の作家生活を強く限定し、続編というべき一群の小説、紀行、第二次大戦従軍記のほかみるべき作品は少ないが、『モンマルトルにいたころ』Montmartre, mon pays(1936)ほかの青春回想、金銭による人間の堕落を扱う『金を退(しりぞ)け』À bas l'argent(1965)などがある。
[小林 茂]
『山内義雄・秋山晴夫訳『木の十字架』(『三笠版現代世界文学全集5』所収・1957・三笠書房)』