フランスの詩人,小説家。本名フランソア・カルコピーノ・チュゾリFrançois Carcopino-Tusoli。ニューカレドニアに生まれて,1910年からパリで放浪生活を始める。盛り場をさまよい歩き,娼婦,泥棒,ごろつき,不良少年,プレイボーイ等と交わりながら,下層民の生活のなかに詩想を感じ取ってゆく。このような生活のなかから,《ボヘミアン生活とわが心》(1912)等の詩集,《ジェジュ・ラ・カイユ》(1914),《追いつめられた男》(1922),《たかが一人の女だけど》(1924)等の小説によって,いわゆる〈幻想派〉の始祖にふさわしい,幻想的な哀愁あふれる文学世界を実現した。37年にアカデミー・ゴンクールの会員となる。
執筆者:若林 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
フランスの詩人。本名はフランソア・カルコピノFrançois Carcopino。ニュー・カレドニア島のヌーメアに生まれる。パリの下町の庶民的な空気を愛し、そこに漂う愛と悲しみと人間的な不安を皮肉に歌った。代表詩集に『放浪生活とわたしの心』(1912)があるが、この表題に彼の文学のすべてが明示される。詩人として以外にも、ビヨン、ユトリロ、ベルレーヌなど、パリで生きた芸術家や詩人の伝記『フランソア・ビヨン物語』(1926)、『伝説ユトリロの生涯』(1927)、『ベルレーヌ』(1939)、あるいは『ジェジュ・ラ・カイユ(娼婦イエス)』(1914)、アカデミー・フランセーズ小説大賞を受けた『追いつめられた男』(1922)、『たかが一人の女だけれど』(1924)の作家として名高い。自伝的回想記『モンマルトルからカルチエ・ラタンへ』(1927)は貴重な文学的資料。
[窪田般彌]
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