リンパ球の一種。全身の細胞をくまなく監視し、悪性変化して癌(がん)化した細胞やウイルスの侵入を察知し、ウイルスだけでなく感染した細胞ごと殺そうと働く。T細胞のように体内にある特定の抗原をそれと認識して反応するのではなく、ウイルスに感染した細胞をみつけだして殺す殺し屋(キラー)であるため、この名がついた。略称NKC で、NK細胞ともいう。
リンパ球のなかで先天免疫を担っている。体内にある細胞のほとんどは細胞表面にそれと認識される特有な暗号、すなわち主要組織適合遺伝子複合体(MHC:major histocompatibility complex)をもっており、MHCのうちのクラスⅠはすべての細胞の表面に発現している。NK細胞はこのMHCクラスⅠを感知する受容体をもち、その発現量を監視して癌細胞やウイルスに感染し発現量が低下している細胞をみつけだして融解する。これによって正常細胞を傷つけずに免疫機能を果たす。
[編集部]
…ピット細胞pit cellは,76年ウィッセE.Wisseらにより記載された新しい肝構成細胞で,類洞腔内に偽足をのばして付着している。最近の研究によれば,この細胞は,リンパ球の一種であるナチュラル・キラー細胞natural killer cellと考えられており,肝臓の免疫監視機構に関与しているらしい。その細胞質は,電子密度大の顆粒と“rod‐cored vesicle”と呼ばれる特殊な小胞によって特徴づけられる。…
…このようにして,それぞれの動物種は,もともとある種の感染症から免れるように生まれついている。そのほかにも,自己でないような異種の細胞やウイルス感染などで変化した細胞が生体内に存在すると,個体は非特異的な液性因子,たとえばリゾチームや補体成分などでそれを破壊しようとするし,ナチュラルキラー細胞natural killer cell(NK細胞と略記)と呼ばれるリンパ球系細胞は,それに初めて出会ったにもかかわらず異物と認めて破壊してしまう。さらに拡大して考えると,O型の人は,輸血を受けたことがないにもかかわらず,もともとA型赤血球に対する少量の抗体をもっているし,自然界に存在するさまざまな抗原物質に対して,これまで接触した経験がないのに,しばしばきわめて微量の抗体をつくりつづけている場合も多い(これを自然抗体という)。…
…免疫応答に関与する細胞の総称。抗原の特異性に対応した,いわゆる特異的免疫を分担しているのはリンパ球であるが,非特異的免疫はおもにマクロファージとナチュラルキラー細胞の役割である。これらの細胞系は独立に働くこともあるが,相互作用によって機能を発現することが多い。…
※「ナチュラルキラー細胞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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