生体は、自然にせよ人工的にせよ体内に抗原が入ると、それに対する免疫応答の結果として特異的に反応する抗体およびリンパ球を生じ、ふたたび抗原と遭遇するとアレルギー反応をおこす。このように、ある抗原に対しアレルギー反応をおこしうる状態にすることを感作という。たとえば、モルモットに異種タンパク(抗原)を注射し、1~2週間後にふたたび同じ抗原を注射するとアナフィラキシー(激しいショック症状)をおこすが、この場合、前処置注射を「感作する」という。
感作と免疫は区別せず使われることも少なくないが、一般的には、アレルギーをおこしやすい状態にする場合には、「免疫する」というよりも「感作する」ということばが使われる。すでに感作された生体から抗体や感作リンパ球をとり、これを未感作生体に移入することにより感作を成立させることもできる。これを受け身感作(受動感作)という。また、感作という用語は、特異的抗体を結合させた赤血球に対しても用いられ、感作赤血球とよばれる。これは補体結合反応や凝集反応に使用される。さらには、抗原を非特異的な方法で結合させた赤血球も、感作赤血球とよばれることがあり、これは抗原特異的抗体に対する凝集反応などに使用される。
[高橋昭三]
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…たとえば,ペニシリンの注射を受けているうちに,この薬剤に対して過敏となり,ペニシリンの注射によってショック死を起こすような場合(ペニシリンショック)や,魚や卵を食べると蕁麻疹(じんましん)が起こるような場合がこれに一致する。また,こうした外来の物質に対して過敏な状態にすることを感作sensitizationという。現在は〈抗原抗体反応が生体に及ぼす影響のうち病的過程を示すもの〉を総括した言葉であると考えればよく,同様に免疫はいちおう〈抗原抗体反応が生体に及ぼす影響のうち有利に作用するもの〉と考えるのが普通である。…
…回避できないアレルゲンによってひき起こされるアレルギー性疾患に対する特殊な治療法。抗原物質に対して過敏な状態にすることを〈感作sensitization〉といい,その過敏性を除去する処置を〈減感作〉(かつては除感作,脱感作といった)という。減感作療法はこの方法を用いたものである。…
※「感作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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