ニトロイル化合物(読み)ニトロイルカゴウブツ

化学辞典 第2版 「ニトロイル化合物」の解説

ニトロイル化合物
ニトロイルカゴウブツ
nitroyl compound

陽イオン性原子団NO2,または陽イオンNO2を含む化合物.ニトリル(nitryl)化合物.ニトロキシル(nitroxyl)化合物,さらに陽イオンNO2を含む化合物はニトロニウム塩といわれることもある(英語では普通nitrylという).【】陽イオン性原子団NO2を含む分子性化合物:NO2X(X = F,Clなど).
(1)NO2Cl(81.46).ClSO3Hと濃硝酸との反応や,N2O5とPCl5との反応で得られる.無色塩素に似た臭いのある有毒気体.密度1.3 g cm-3(液体).平面三角形型分子で,Cl-N1.84 Å,N-O1.20 Å.∠Cl-N-O115°.融点-145 ℃,沸点-15 ℃.120 ℃ 以上で分解してNO2と Cl2 になる.水で加水分解してHNO3とHClになる.有機物とはげしく反応する.有機合成のニトロ化剤,塩素化剤に用いられる.[CAS 13444-90-1] 
(2)NO2F(65.00).NO2またはNaNO2と F2 との反応で得られる.平面三角形型分子で,無色の発煙性の有毒気体.密度1.8 g cm-3(液体).融点-166 ℃,沸点-72.5 ℃.水で加水分解してHNO3HFになる.強力なフッ化剤で,多くの金属をフッ化物とする.また,有機物と反応し,たとえばエタノール硝酸エチルに,ベンゼンニトロベンゼンとする.フッ化剤,ロケット推進薬の酸化剤などに用いられる.[CAS 10022-50-1]【】陽イオンNO2を含むイオン結晶:[NO2] X(X = ClO4,BF4,HS2O7,PF6など).例;NO2ClO4(145.46).無水硝酸と無水過塩素酸をニトロメタン中で反応させ,N2O5を加えて析出させると得られる.直線形の [O-N-O] と,正四面体型の [ClO4] からなるイオン結晶.固体は約120 ℃ で分解する.加水分解で硝酸を生じる.ニトロベンゼン溶液中でニトロ化反応に利用できる.試薬,ロケット推進薬の助燃剤に用いられる.なお,N2O5は,室温の気体ではO2N-O-NO2分子であるが,液体窒素温度の固体では [O-N-O] と,[NO3] からなるイオン結晶で,硝酸ニトロイルに相当する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android