芳香族ニトロ化合物の一つ。ニトロベンゾールともいう。アーモンドのような甘い香気をもつ淡黄色の液体で、水に難溶、有機溶媒に可溶。過剰のベンゼンを混酸(硝酸28%、硫酸57%、水15%)と70℃以下で反応させれば得られる。毒性は高くはないが液体、蒸気ともに有毒で、貧血および神経系と肝臓の障害をおこす。ニトロベンゼンは発煙硝酸と濃硫酸の混酸によってさらにニトロ化されてm(メタ)-ジニトロベンゼンを生ずる。また、ニトロベンゼンを酸性で還元すればアニリンを生じ、中性で還元すればフェニルヒドロキシルアミンを与えるので、有機合成中間体として重要な化合物である( )。
[加治有恒・廣田 穰 2015年3月19日]
ベンゼンを混酸(濃硫酸と濃硝酸の混合物)でニトロ化すると得られる芳香族ニトロ化合物。
1834年にE.ミッチェルリヒによって初めて合成された。純粋なものは無色の液体で,独特の強い臭いがある。密度d240=1.2037,融点5.85℃,沸点211.03℃。水に難溶,大部分の有機溶媒に可溶。毒性が高いうえに皮膚から吸収されやすいので,蒸気の吸入,液体への接触のないよう注意が必要である。ニトロベンゼンを還元すると,図に示すような種々の芳香族窒素化合物を得ることができる。工業的にはアニリンの製造原料として重要である。有機物に対して非常に大きな溶解力をもつので,通常の溶媒に不溶な物質の再結晶溶媒としても用いられる。
執筆者:小川 桂一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
C6H5NO2(123.11).ベンゼンを混酸でニトロ化すると得られる.淡黄色の油.融点5.7 ℃,沸点210.9 ℃.1.20.1.55296.甘味のある香りをもつ.蒸気および液体はヒトに有毒で,チアノーゼを起こす.大部分の有機溶媒とまざるが,水に難溶.酸性および中性で還元すればアニリンが,アルカリ性で還元すればアゾキシベンゼン,アゾベンゼンを経てヒドラゾベンゼンが得られる.染料工業において,アニリンの原料として重要性をもつ.また,極性溶媒として,ときには穏やかな酸化剤として用いられることもある.皮膚からの吸収が速く,蒸気も毒性が強い.LD50 640 mg/kg(ラット,経口).[CAS 98-95-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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