改訂新版 世界大百科事典 「ノコギリガザミ」の意味・わかりやすい解説
ノコギリガザミ
Scylla serrata
十脚目ワタリガニ科の甲殻類。大型種で,東南アジアなどでは食用ガニとして重要。東京湾以南,ミクロネシア,東南アジアを経てインド洋西部,紅海まで広く分布している。河口付近の干潟やマングローブ湿地に多いため英名はmud crab,あるいはmangrove crabである。甲はイチョウの葉形で,甲幅20cmに達する。前側縁に各9本,額に6本の三角形の突起があり,これをのこぎりの歯に見たててこの名がある。はさみ脚は強大。一様に青緑色であるが,はさみは橙黄色の個体が多い。分類学的には1属1種とされているが,甲面やはさみ脚に網目模様がある個体があり,別種または別亜種と考えられたこともある。小動物を捕食する。熱帯,亜熱帯地方に多いが,浜名湖にすみついた1群があり,保護管理のもとに漁獲対象とされている。台湾やフィリピン,東南アジアでは高価で,甲幅1.5cmほどの稚ガニを池で飼育する。とくに抱卵雌が好まれるため,抱卵後に出荷される。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報