日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノブゴロド共和国」の意味・わかりやすい解説
ノブゴロド共和国
のぶごろどきょうわこく
中世ロシアの都市国家(12~15世紀)。当初キエフ大公国から派遣される公や代官によって統治されていたが、11世紀末から都市側の自立傾向が強まり、12世紀になると公との間に「約定」を結び、抑圧的な公を追放しながらしだいに独立するに至った。その領土は西方と南方においてはドイツ騎士団、リトワ(リトアニア)、トベリ、モスクワ各大公国に遮られていたが、北方と東方においてはカレリア、白海沿岸地方からウラル地方にまで達していた。これらの地方は農耕には適さなかったが、毛皮獣、海獣、魚、蜂蜜(はちみつ)、塩、蝋(ろう)などの産品を豊富にもたらした。国政の最高機関は自由な市民が集う首都ノブゴロドNovgorodの民会で、それは、公、市長官、千人長、大主教らの要職を任免し、また外国との条約を締結するなど重要な役割を果たした。だが実際の権限は、大主教を中心とする貴族会議にあり、市長官や千人長らも名門貴族のなかから選ばれるのが通例であった。ノブゴロドはハンザ諸都市やロシアの他の地方と活発に交易を行って富み栄えたが、やがて門閥貴族間の権力争いや貴族・上層市民と下層市民との対立に悩まされ、強力な国家体制を確立しえぬままに1478年モスクワ大公の軍門に下った。
[栗生沢猛夫]