改訂新版 世界大百科事典 「ハンバル派」の意味・わかりやすい解説
ハンバル派 (ハンバルは)
Ḥambal
イブン・ハンバルの弟子たちによって結成されたスンナ派イスラムの法学派。イブン・ハンバル自身がそうであったように,この派はハディースの徒の系統を引いて伝統主義的で,イジュマー(合意)をサハーバ(教友)のそれに限り,キヤース(類推)の行使を最小限にとどめ,思弁神学(カラーム)とイスラム神秘主義に強く反対した。ブワイフ朝のバグダード入城(946)まで,この地で最も勢力を誇る法学派であったが,ブワイフ朝のシーア派保護政策により,しだいに勢力を失った。イブン・タイミーヤと,その弟子イブン・カイイム・アルジャウジーヤの活躍により,14世紀にシリアで一時勢力を回復したが,あまりにも排他的であったため長続きしなかった。18世紀にイブン・タイミーヤの強い影響を受けたワッハーブ派がアラビア半島に興り,現在ハンバル派に属しているのは,このワッハーブ派だけである。
執筆者:嶋田 襄平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報