ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説
バッシャール・イブン・ブルド
Bashshār ibn Burd, Abū Mu`ādh
[没]784/785頃.バスラ?
アラビア語詩人。ただし血統はイラン系で,イランが生んだ最初のアラビア語の大詩人といわれている。先祖は中央アジアのトゥハーリスターン (トカラ) の土着だったが,バッシャールの祖父がアラブ軍の捕虜となってイラクに連行された。父親のとき奴隷身分から解放され,バスラで煉瓦積み工として生計を立てた。バッシャールは容貌醜劣で,盲目だったが,稀有の詩才に恵まれ,ウマイヤ朝末期から頌詩をもって巧みに権門に取入った。アッバース朝時代になっても,その才能をもって時のカリフ,マンスールに愛され,また美女たちの心をつかんだ。しかし,内心はイラン民族の優越性を信じ,イスラムへの信仰は表面だけで,拝火教への信仰を捨てなかったらしい。そのため,ついにカリフ,マフディーから見放され,ズィンディーク (異端者) として逮捕され,笞打ちとなって殺され,死骸はバティーハ (ユーフラテス川下流の沼沢地) に捨てられた。彼の詩はウマイヤ朝の盛時から,アッバース朝の黄金時代に移る過渡期を代表するものとして重要視されている。ウマイヤ朝の恋愛詩の大家ウマル・イブン・アビー・ラビーアに続くすぐれた恋愛詩も多く残した。
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