ババガセ (婆々が背)
Placiphorella japonica
多板綱ヒゲヒザラガイ科の軟体動物。体の長さ5.5cm,幅4.4cm,高さ1cmに達する。円形に近い卵形,背面の殻の部分は丸くて後方に寄るので,殻のまわりの肉帯は前方で広い。殻は前後に8枚が重なりあって並ぶ。おのおのは横に細長く淡灰褐色で褐色の縦縞がある。肉帯の上には多数の突起と小針があり,色は淡い。肉帯の下面の前部は暗赤色の放射帯がある。また前方の内縁には12~20本の指状突起がある。本州~九州の潮間帯の岩礁にすむ。体前方の広い肉帯をもち上げては近よってきた小動物の上にかぶせてとらえて食べる。近似種キタノババガセP.stimpsoniは陸奥湾,北海道より北太平洋岸からカリフォルニアにかけて分布し,体は多少小型で細長い。ババガセに対してヒザラガイをジイガセ(爺が背)という。いずれもこの貝が岩からはがされると丸く足のほうへ湾曲するのを老人の背の曲がったのに見たてて名付けられた。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ババガセ
Placiphorella japonica
軟体動物門多板綱ヒゲヒザラガイ科。体長 5.5cm,体幅 4.4cm,体高 1cm。体は灰褐色,円形に近く,背面のふくらみは弱い。殻は体の後方に寄り,8枚の殻板に分れて前後に重なって並んでいる。体の前方は肉帯が広く,その上に多くの突起がある。腹面も前方に広く,内縁に指状突起をもつが,この部分を持上げて岩の表面にかぶせ,小動物を捕食する。北海道南部から九州の潮間帯岩礁にすむ。
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世界大百科事典(旧版)内のババガセの言及
【市民運動】より
…1954年の第五福竜丸ビキニ被災事件([ビキニ水爆実験])をきっかけに,東京杉並の婦人読書会〈杉の子会〉が呼びかけた原水爆禁止署名運動は世界的な反響を呼び,広島での原水爆禁止世界大会の開催,平和団体〈原水爆禁止協議会〉創設の原動力となった([原水爆禁止運動])。また〈息子を戦場に送るな〉のスローガンのもとに〈母親大会〉を開いた婦人たちも,自発的な市民の立場から平和運動の一翼を担った。さらに内灘,妙義,砂川,百里原などの基地反対運動では,地元住民の土地を守るたたかいが,学生・知識人の支援のもとに展開された。…
【女性運動】より
…のち日本婦人有権者同盟)などの各種女性団体が組織され,〈主婦連合会〉(1948年結成,[主婦連])は,物価引下げ運動を展開した。また平和運動,原水爆禁止運動にはたくさんの女性が参加し,〈[母親大会]〉(1955発足)はその声の集約となった。しかし,最大の組織である〈全国地域婦人団体連絡協議会〉([地婦連])が,戦時中の女性団体の行政癒着的性格を払拭しきれないで存在する一方で,1960年代から女性運動に対する政党による系列化が進み,社会党系の〈日本婦人会議〉,共産党系の〈新日本婦人の会〉,民社党系の〈民主婦人の会〉,公明党系の〈主婦同盟〉が結成され,〈働く婦人の中央集会〉(総評,日本婦人団体連合会などが中心となり,女性労働者の交流と学習のために1956年以降毎年開催)にも政党が影を落とすようになった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」