日本大百科全書(ニッポニカ) 「バン・ド・グラーフ」の意味・わかりやすい解説
バン・ド・グラーフ
ばんどぐらーふ
Robert Jemison Van De Graaff
(1901―1967)
アメリカの物理学者。アラバマ州生まれ。アラバマ大学で工学を学び、その後ヨーロッパに渡り、ソルボンヌ大学でマリー・キュリーの講義を聞くなどして物理学への関心を深め、オックスフォード大学で物理学の学位を取得。その後、プリンストン大学の特別研究員となり、8万ボルトで作動する最初の帯電式の静電的高圧発生装置を組み立てた。1931年マサチューセッツ工科大学(MIT)に移り、本格的開発を行い、1935年発効の特許を得た。この間1934年に準教授となり、1960年まで務めた。1937年には1MeV(メガ電子ボルト)のX線発生装置を製作し、がん治療にそれを用いるボストンの病院に設置した。第二次世界大戦中は、MITの高電圧放射線写真班の責任者として2MeVのX線発生装置を5台製作、それはおもに海軍の重量兵器の非破壊検査に使用されたが、その装置に採用された新しい加速管の技術は、その後のより高エネルギーの荷電粒子生成のための装置製作の基礎となった。1946年末、数人で粒子加速器の製作を目的とする会社を設立。1951年のアルバレズによるタンデム原理の再発見以降は、タンデム原理を利用した重イオン加速装置の開発に向かった。
[日野川静枝 2019年1月21日]