パニエ(その他表記)panier[フランス]

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改訂新版 世界大百科事典 「パニエ」の意味・わかりやすい解説

パニエ
panier[フランス]

本来は〈籠〉の意であるが,ロココ時代,婦人服のスカートをふくらませるために,針金や木の枠,鯨のひげなどを用いて作られたペティコートを指す。イギリスではこれをフープhoopまたはフープド・ペティコートと称した。おそらくルネサンス時代のファージンゲールが18世紀初頭のイギリスで復活したものらしく,1718-20年ころには早くもフランスに伝えられ,形が鳥籠に似ているところからパニエと呼ばれた。鐘状,楕円状などさまざまな形のものが流行し,一般市民の間にも簡素化した形で広まり,宮廷服としてはフランス革命直前まで使用されつづけた。とくに18世紀の中ごろには,腰の両脇に二つのパニエをつけ,上端のひもでウエストに固定するように考案された〈パニエ・ドゥブルpanier double〉が現れ,体の左右に大きく張り出しているため横にならなければドアを通り抜けられなかった。さらにはこの左右のパニエを馬車の幌のように折りたためるものまで現れている。
スカート
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パニエ」の意味・わかりやすい解説

パニエ
panier; pannier

ヨーロッパの女性が 18世紀に使用したスカートを広げるための腰枠形式のペティコートないしアンダースカートの1種。パニエはフランス語で,英語ではフープあるいはパニアーという。 1718年頃,舞台女優が用いたのが初めとする説があるが,定かではない。 1720年代以後普及した。当初は吊り鐘状で,横に数段に重ねたトウ (籐) ,木枠,針金,くじらひげなどを輪形にし布テープで連結したもので,のちにはちょうつがいの原理を活用して,両脇下にそれらをかかえ込むことのできるように工夫されたものも現れた。パニエはモードの極盛期であるロココ時代の優美な婦人服の最大の特徴であった。

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