とう(読み)トウ(英語表記)rattan palm
rattan

デジタル大辞泉 「とう」の意味・読み・例文・類語

と・う〔とふ〕

[連語]《「とい(言)う」の音変化》…という。
「これやこの名に負ふ鳴門なると渦潮うづしほに玉藻刈る―・ふ海人あま娘子をとめども」〈・三六三八〉
[補説]主に奈良時代、和歌に用いられた。→ちゅうちょう

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精選版 日本国語大辞典 「とう」の意味・読み・例文・類語

と・うとふ

  1. 〘 連語 〙 ( 「という」の変化したもの。終止形連体形との用法がある ) という。
    1. [初出の実例]「大和の国を 蜻蛉島(あきづしま)登布(トフ)」(出典:古事記(712)下・歌謡)
    2. 「音に聞き目にはいまだ見ず佐用姫が領巾(ひれ)振りき等敷(トフ)君松浦山(まつらやま)」(出典:万葉集(8C後)五・八八三)

と・う

  1. 〘 自動詞 ワ行上二段活用 〙 うねり動く。動揺する。
    1. [初出の実例]「畝火山 昼は雲登韋(トヰ) 夕されば 風吹かむとぞ 木の葉さやげる」(出典:古事記(712)上・歌謡)

とうタウ

  1. 〘 名詞 〙 鳥「とき(鴇)」の異名。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「とう」の意味・わかりやすい解説

トウ (籐)
rattan palm
rattan

トウ属Calamus,キリンケツ属Daemonoropsなど,熱帯に産する数種のつる性ヤシ類の総称。茎は籐いすや籐細工に用いられる。茎はつる性で細く,他の木に巻きついて伸び,長さ60~180mになるものもある。茎には節があって,ここから長い柄のある葉を出す。葉柄の基部は葉鞘(ようしよう)となって茎を抱き,葉は羽状複葉で,先端は通常,むち状に長く伸びる。葉柄や葉鞘,葉の裏面の中肋には太く鋭いとげが下向きに多数あり,また茎にもとげを有するものがあって,これらのとげで他物にからみつく。小葉は通常,線状披針形,まれにひし形状くさび形(Korthalsia属)である。花は雌雄異株または同株,肉穂花序は腋生(えきせい)するが,一部のものでは頂生する。花序は外側を筒状または裂開性の仏焰苞(ぶつえんほう)で包まれている。果実は球形または楕円形で,長さ1~2cm,外側は瓦重ねの光沢ある鱗片でおおわれ,赤色の脂質の液を分泌するものがある。トウ類は熱帯アジア,オーストラリア北部(一部はアフリカおよび南アメリカ)に約500種を産し,マレーシアにおいてもっとも分化発達している。このうちアジアに分布するキリンケツ属(約100種),トウ属(約375種),Korthalsia属(35種),Plectocomia属(6種),Ceratolobus属(5種)などのとげをとりのぞいて,すべすべにした茎が籐細工に用いられるが,種類によって品質や用途が多様に分化している。スマトラ産のキリンケツDaemonorops draco Bl.やD.kurzianus Hook.f.,D.propinquus Becc.の果実の鱗片の間から分泌される紅色の樹脂は麒麟血(きりんけつ)(英名East Indian dragon's bloodあるいはdragon's blood)と称し,家具用ニスの製造,歯みがき粉や飲料水などの着色用,薬用とされる。トウ類の果実は,種子をつつむ甘い果肉があり食用にされるし,若芽も食べられる種があるが,多くは小さすぎたり,苦味が強かったりする。また幼植物は,温室で観賞用に栽植される。

 トウ類は陽性の植物であり,密林内では光不足のため高さ約30cm~1mぐらいで,何年も生長休止の状態でいる。しかし上木が伐採されるか,暴風で倒れて,林内に光が入るようになると,いっせいに生長を始めて,トウのまつわりついた密林となる。このような林はトウのとげのため,林内に侵入することはほとんど不可能である。熱帯の原生林ジャングルと呼ぶのは誤りで,ジャングルというのは前記のようにトウが密生した林,つまり二次林のことである。
執筆者:

籐は軽く強靱で柔軟性に富み,しかも耐久性があって,茎の太さも50~60mmになるため,きわめて利用範囲が広い。日本においても古くから,籐を繁く巻いた重籐弓(しげとうのゆみ)など武器類の柄巻きや,その他道具類の柄巻きなどとして重用された。編むことにおいては竹のほうが普及したが,仕上げとなる縁回りやかがりには籐のほうが適しており,その編み方の種類は100種にも達するという。近年はその材質感と軽さが好まれ,屋内の家具調度,とくにラタン・インテリアとして生活のうちに定着している。
執筆者:


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普及版 字通 「とう」の読み・字形・画数・意味


18画

[字音] トウ(タウ)

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(とう)。〔説文〕十上に「(たうと)。北野の良馬なり」、また字条に「なり」、〔爾雅、釈畜〕に「は馬なり」とみえる。〔山海経、海外北経〕に「北に獸り、其の、馬の如し。名づけてと曰ふ」とあり、野馬にしてその色は青であるという。

[古辞書の訓]
字鏡集 ヨキムマ

[熟語]



18画

[字音] トウ(タフ)

[説文解字]

[字形] 形声
声符は(とう)。〔説文〕十二上に「樓上のなり」とあり、〔西京の賦〕にいう飛闥(ひたつ)の類であろう。〔広雅、釈室〕に「閭里なり」とあり、その門をいう。は卑陋の意。

[訓義]
1. 楼上の戸。
2. むらざと、里門。
3. はおろか、いやしい。

[古辞書の訓]
〔字鏡〕 ロウノト 〔字鏡集〕 ワヅラフ

[熟語]



27画

[字音] トウ(タウ)

[説文解字]

[字形] 形声
声符は黨(党)(とう)。〔説文新附〕三上に「直言なり」とあり、善言をいう。

[訓義]
1. ただしいことば、よいことば。
2. 字はまた(とう)に作る。

[古辞書の訓]
名義抄 カナフ/ ナカコト 〔立〕 モシ・カナフ 〔字鏡集〕 カナフ・ヨキコトバ・ナホキコトバ

[熟語]



13画

[字音] トウ(タフ)

[字形] 形声
声符は(とう)。〔玉〕に「舐(な)むるなり」とみえるが、古い用例はない。〔荘子、斉物論〕に、忘我のさまをいう形況の語として用いる。

[訓義]
1. こころむなしいさま。忘我の境をいう。
2. なめる。

[古辞書の訓]
〔字鏡集〕 ムス

[熟語]

[下接語]



19画

[字音] トウ(タウ)

[説文解字]

[字形] 形声
声符は堂(どう)。〔説文〕十四上に「鼓の聲なり」とし、「詩に曰く、鼓をつこと其れたり」と〔詩、風、撃鼓〕の句を引く。

[訓義]
1. 鐘鼓の音、その擬声語
2. 鐺(とう)と通じ、かねさし。

[古辞書の訓]
立〕 カナワトキ 〔字鏡集〕 ツツミノコヱ



15画

[字音] トウ

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は登(とう)。〔説文〕六下に「曼姓の國、今、南陽に屬す」とあり、地名としては、山東の魯、河南城(えんじよう)にその地がある。金文には曼姓の孟の器のほか、伯、(かい)姓のの器などがある。

[訓義]
1. 古代の周の国の名。
2. 地名。


烏】とう

月。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「とう」の意味・わかりやすい解説

トウ
とう / 籐
[学] Calamus rotang L.

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)トウ亜科トウ属の一種。属名は葦(あし)、種名は杖(つえ)の意味である。インド原産。幹は細長く、他物についてよじ登り、または地をはい、長さ100メートル以上に及ぶ。幹肌には葉痕(ようこん)の環紋がある。葉は披針(ひしん)形、全裂の羽状葉で長さ40~80センチメートル、小葉は長さ15~30センチメートル、幅1.2~2センチメートル。葉軸、葉脈、葉柄、葉鞘(ようしょう)に鋭い刺(とげ)がある。葉柄は短く、葉鞘は長さ0.7~1メートル。雌雄異株で単性花をつける。雄性の肉穂花序は長さ0.6~1メートル、雄花は長さ2ミリメートル、花弁は舟形の披針形で、雄しべは6本、葯(やく)は矢じり状、不稔(ふねん)の雌しべがある。萼(がく)は鐘状。雌性の肉穂花序は長さ15~20センチメートル、雌花は円錐(えんすい)形で長さ3ミリメートル、6本の無葯の雄しべがある。包葉には無数の鋭い刺がある。果実は光沢のある褐色の鱗果(りんか)で径1.2~1.5センチメートル。種子は扁円(へんえん)形で径1センチメートル、胚(はい)は底部にある。材は耐久性が強く、強靭(きょうじん)で、機械、器具、家具のほか、籐椅子(とういす)やステッキなど工芸品にもよく用いられる。観賞用に栽培もされ、多湿にし、最低温度は10℃を要する。

 トウ亜科は724種を含み、熱帯・亜熱帯アジア、オーストラリアに分布する。

[佐竹利彦 2019年4月16日]


とう
とう / 薹

花期が近づいたときに急速に伸びて直立し、花または花序をつける茎をいう。やや通俗的な語で、植物学用語の花茎にほぼ相当し、野菜などの有用植物に対して用いられることが多い。生育初期の栄養成長期には節間があまり伸びずに多数の葉が地際に密生してロゼットとなっているが、生殖成長期になると、茎は地際の葉(根出葉という)よりも小さくて簡単な形の葉だけをつけるか、または普通葉をつけないで高く伸びるような場合、この現象を「とうが立つ」とか「抽薹(ちゅうだい)する」という。アブラナ科、アカザ科、セリ科などに多くの例があり、とくに越年性長日植物において豊富である。フキの場合、地下茎から普通葉とは別に出る多数の頭状花序と鱗片葉(りんぺんよう)をつけた花茎を「ふきのとう」とよぶが、これは根出葉をもたない。

[福田泰二]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「とう」の意味・わかりやすい解説

トウ(籐)
トウ
cane palms

ヤシ科のつる性植物 CalamusDaemonoropsなど数属約 200種ほどの総称。茎は長く伸び,200mにも達するものがあり,種子植物中最長のものといわれる。葉は大型で 1.5~2mになり羽状複葉で互生する。小葉は細長い線形で基部は鞘状,葉の中肋および葉柄に逆向きのとげがあり,また小葉の葉鞘にも小型のとげがあって他物にからみつく。茎は軽く,弾力があり家具,ステッキなど籐細工に用いられる。生産地はマレー半島やインドネシアであるが,籐細工の製造はシンガポール,ホンコンなどが中心である。台湾や中国南部にも自生種がある。

とう
tao

膜鳴楽器。中国の振鳴らす太鼓。小型の太鼓の胴に差込んで柄を回転すると,取付けられた糸の先の小さい玉が皮面に当ってぱらぱらと音をたてる。周代から史料にみえ,漢代には雅楽に用いられた。朝鮮でも雅楽器として用いられ,日本に伝わり,雅楽に使われた (奚婁鼓〈けいろうこ〉と併用する) 。後世子供の玩具 (でんでん太鼓) となった。

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百科事典マイペディア 「とう」の意味・わかりやすい解説

トウ(籐)【トウ】

ヤシ科の数属のつる性植物の総称。中国南部から東南アジアに多く産する。幹は他の樹木にからまって長くのび,200m近くにも達し,陸上植物中,最も長い。茎は乾燥すると軽くて弾力があり,丈夫なため椅子(いす)などの家具(ラタン・インテリア)や,ステッキなどを作る。
→関連項目繊維作物

トウ(繊維)【トウ】

化学繊維の紡糸された糸を多数集めロープの形にして巻いた長い繊維束。適当な長さに切断し紡績原料とする。
→関連項目直紡機

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世界大百科事典(旧版)内のとうの言及

【直紡】より

…直接紡績の略。スパンレーヨンなどの製造において,数千本ないし数万本の長繊維束をゆるいロープの形にして巻いたトウtowを切断して,綿状のステープルファイバーにし,繊維を平行に並べ,伸ばし,撚り(より)をかけて精紡する。直紡においては,繊維をそろえて平行に並べて伸ばすカーディング操作が省略される。…

【紡績】より

…(1)繊維の長さによる分類 (a)短繊維紡績(繊維長約50mm以下),(b)長繊維紡績(繊維長約50mm以上)。(2)原料による分類 (a)綿糸紡績および落綿紡績,(b)毛糸紡績(梳毛(そもう)紡績,紡毛紡績),(c)絹糸紡績(長綿紡績,短綿紡績,紬糸(ちゆうし)紡績),(d)麻糸紡績(亜麻紡績,ラミー紡績ほか各種),(e)化学繊維の紡績(綿紡式,毛紡式,トウ紡績,直紡式)。 紡績法における短繊維,長繊維の区別は明確でなく,綿と同様な紡績法をとる場合は短繊維紡績,梳毛と同様な場合は長繊維紡績である。…

【ヤシ(椰子)】より

…また,この多数の属や種の多くは限定された狭い地域にのみ分布するという,固有性の強い植物群でもある(図)。 幹(茎)は単一で直立するものが多いが,シュロチクのように株立ちになるもの,トウのようにつる性のもの,あるいはニッパヤシ(イラスト)のように地表を横走するものもある。葉は葉鞘(ようしよう),葉柄,葉身の三つの部分に分化しており,しばしば大型となり,ニッパヤシのように10mをこえることもある。…

※「とう」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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