日本大百科全書(ニッポニカ) 「パラオハナダイ」の意味・わかりやすい解説
パラオハナダイ
ぱらおはなだい / パラオ花鯛
longtailed slopefish
[学] Symphysanodon maunaloae
硬骨魚綱スズキ目カワリハナダイ科に属する海水魚。九州・パラオ海嶺(かいれい)、マラッカ海峡、スンバワ島(インドネシア)、ハワイ諸島などの海域に分布する。体は細長く、側扁(そくへん)する。両眼間隔域は平坦(へいたん)。主上顎骨(しゅじょうがくこつ)は前部が眼前骨でわずかに覆われ、その後端が目の中央下に達する。上下両額に微小な歯があるが、鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)、口蓋骨、翼状骨には歯がない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の垂直部には小さい鋸歯(きょし)があり、水平部には鋸歯がないか、わずかな鋸歯がある。主鰓蓋骨に2本の扁平な棘(きょく)がある。鱗(うろこ)は弱い櫛鱗(しつりん)で、はがれやすい。頭部は吻端(ふんたん)を除いて鱗で覆われる。側線有孔鱗数は42~47枚。側線は鰓孔上端から始まり、体の背縁に並行して緩く一様に曲がり、尾柄(びへい)中央部まで達する。背びれと臀(しり)びれに欠刻(切れ込み)がない。背びれは9棘9~10軟条、臀びれは3棘7軟条。尾びれは深く二叉(にさ)し、上下の軟条は糸状に伸長する。腹びれの第1軟条は雄では著しく糸状に伸長し、尾びれ基底に達するが、雌では肛門(こうもん)に達しない。胸びれは長く、背びれ第1~第2軟条下付近に達する。体は黄色がかった赤色で、腹面に向かって淡くなる。体側に微小な多くの青色点が散在する。後頭部から鰓蓋直後を通り、胸びれ基底の上方に達する暗色帯がある。背びれと尾びれは黄色みを帯びた赤色で、背びれの鰭膜(きまく)の上縁と尾びれの両葉の先端は黒い。腹びれと臀びれは桃色みを帯びた真珠色。水深80~700メートルの岩礁、海山、海嶺域に生息し、底引網で漁獲されることがある。最大体長は15センチメートル。
本種は一見するとハナダイ類に似るが、背びれ棘が9本で、主鰓蓋骨の棘が2本であることで、カワリハナダイ、ツキヒハナダイS. typusなどとともに暫定的に創設されたカワリハナダイ科に含められている。
[尼岡邦夫 2023年5月18日]